【自キ】自作キーボードを設計してみよう 2.レイアウト編【設計】


 前回は『1.スタート編』として、自作キーボードを設計する上で必要と思われる準備について触れました。

 今回から実際に自作キーボードを作るためにひとつひとつ、作例として私が設計・製作中の疑似日本語配列キーボードである『Act-JP52』を取り上げつつ触れていきます。


 さて、自作キーボード設計のスタートとして、『どんなキーボードを使いたいのか?』があると思います。これがハッキリしていればいるほど、出だしは順調となるでしょう。

 今回は『Keyboard Layout Editor』を使って、キーボードのレイアウトを決めていきましょう。



 どんなキーボードが使いたいのか? それは使い心地の面も大きいかと思いますが、その多くはレイアウトに依存するかと思います。(読者層的に)釈迦に説法的なアレになるので「レイアウトとは何か?」なんて話はここでは省きますが、「どこに、どういう風にキーがあると使いやすいか?」ということをこのレイアウトを考える際に頭の片隅に置いておくことになると思います。

(あまり偉そうに書きたくないなと思って書いたら、何か変な言い回しになりましたが気にしないでください)


 冒頭の画像は私が設計、製作中の疑似日本語配列キーボードである『Act-JP52』のKeyboard Layout Editor上でのレイアウト画像です。キートップ上に見慣れない数字があるかと思いますが、これは後の基板設計で必要となるキーの割り当てですので、今は気にしないでも大丈夫です。



 Keyboard Layout Editorにアクセスすると、説明書きと共にテンキーが表示されています。ここで自分好みのレイアウトをまずは検討してみましょう。

 いきなりゼロからレイアウトを作るのはなかなか難しいかもしれませんので、画面上部にある『Preset』から参考になりそうなものを選んで、それをベースに改良していくのがスタートとしては良いかもしれません。どんなレイアウトが好みなのかまだ決まっていなければ全部見てみる。こんな感じのが作りたい、というレイアウトがあればそれに近いものを選び、いじってみましょう。

実際には別のものから紆余曲折を経てAct-JP52となりましたが、今回はこれをベースにします

 画像は『default 60%』というレイアウトです。英語配列60%でイメージするキーボードそのままという感じのレイアウトですね。今回はこれを作例であるAct-JP52を目指していじっていきます。

 画面上での操作ですが、キーをクリックすると赤線で囲われた状態になります。これが選択された状態です。この状態で矢印キーを押すと、押したキーの方向へと画面上のキーが移動します。不要なキーは選択された状態で『Delete Keys』をクリックすれば消去され、キーを追加したい場合はその隣りにある『Add Key』をクリックすればキーが増えます。キーのサイズは『Properties』というタブにある項目の『Width』を弄れば変わります。


 レイアウトを考えていく前にひとつだけ。自作キーボードを設計する上でこういった見た目のレイアウトだけではなく、英語配列で組むのか、それ以外で組むのかというのも重要です。それは何故なら、キーキャップに影響するからです。カッコイイ、可愛いキーキャップを豊富なラインナップから選びたい、というのであれば英語配列を。日本語配列の使用感が好き、慣れている、仕事的に日本語配列以外は好ましくないというのであれば、日本語配列を選びましょう。ただし、日本語配列を選んだ場合はキーキャップがかなり限られてしまうので注意が必要です。悲しみ。あとは他にISO配列もありますね。

 今回は私が「コンパクトで、日本語配列」のキーボードを作りたかったので、日本語配列としてレイアウトしていきます。これを読みながら自分のキーボードを作ろうという方は、御自分の選んだレイアウトに置き換えて読み進めてください。とりあえずどういう流れか理解したい、ということであれば自分と同じ手順でAct-JP52を作ってみましょう。

(プレートの発注や基板の発注までいかなくとも流れを知りたい、ということでしたら発注の部分以降は読み物として読み、そこまでを一緒に体験していきましょう)


 さて、ベースとなるレイアウトはいわゆる60%キーボードで、これはこれでコンパクトですが私にはもう少し小さく、それでいてキー数を増やす必要性が感じられます。まずはスペースキーを小さくしましょう。ベースでは6.25Uというサイズのスペースキーを使っていますが、こんなにいりません。2Uくらいにしてしまいましょう。

 スペースキー部分を選択し、『Width』を2にします。ホームポジションに指を置いた際に親指が触れる位置にいて欲しいので、矢印キーで移動させます。


おかしなことになっていますが、スペースキーが小さくなりました

 うん、筆者としては良い感じです。……ですが、せっかくなのでこのスペースキーを分割し、それぞれにスペースキー以外の機能(役割)も持たせてみましょう。『Width』を1にして、『Add Key』でもうひとつキーを足してみます。

2Uスペースキーが分割され、1U+1Uの分割スペースキーとなりました

 この状態ではまだこのキーボードは英語配列キーボードのままです。英語配列と日本語配列では何が違うのかと言えば、特徴的なエンターキーもそうですが一部キーの押した際に発せられる信号(何が押されたのかという信号、コード)が異なります。ファームウェアで変えられる部分なのでキーキャップと実際の押されたキーの発する信号が違う、ということは有り得るし可能ではありますが、基本的には使用感として気持ち悪いというかスッキリしない部分なので印字(刻印)と合わせたい部分です。
 エンターキー以外で最も使用感として違いを感じるのは『(、)』という記号が何を押したら画面に表示されるか、という部分でしょうか。日本語配列では『8』と『9』ですが、英語配列では『9』と『0』です。ちょっとズレますね。またそれ以外にも『2』と同居しているのが『”』なのか『@』なのかといったことも違いがあります(ISO配列でも異なります)。今回は、そういった部分のキーをキーキャップで合わせるのが面倒臭い……いえ、合わせにくいのが嫌なので、思いきって数字がある行(最上段、横一列)を取ってしまいます。


 かなりスリムになりましたね。ですが、まだまだ右側とかちょっと「そんなに幅いらなくない?」という感じなので調整しましょう。あと、日本語配列として使うには変換・無変換キーとかも欲しいので、追加していきます。


 かなり良い感じになってきました(?)。ただ、これだと必要なキーが無かったり、日本語配列ライクな使用感は得られません。バランスを整えつつ、必要なキーを増やし、要らないキーを削ってみます。



 はい、Act-JP52のレイアウトが出来ました!(私が設計した『マイキーボード』Ver.とは一部キー配置が異なりますが)
 左右の外形バランスを取った結果、エンターキーがどうやってもキーキャップセットで手に入らないサイズになりましたがここはもう、見た目を取ります。諦めて別の、余ったキーキャップを付けましょう。ちなみに諦めの境地に達すると『無刻印』という選択肢があり、諦めが悪いと無刻印キーキャップに刻印シールを貼るという手段があります。その辺りは後々触れますが、レイアウトを考える上で大事なことは「キーキャップセットに無いサイズのキーは作らない」です。作る場合は代用キーを使うことになる点、覚悟しておきましょう。
(ちなみに私は無刻印キーキャップに『強!キートップシール』というものを貼って使用しています)
 キー数が減った分、『レイヤー』でキーを補う必要があります。『MO』キーはそのためのキーですね。押している間はキーマップが別レイヤーへと変更されますので、たとえば『1』をレイヤー1の『Q』に設定しておけば使えるようになります。指と頭が大変になる可能性もありますが、キー数が少ないキーボードで必須の操作なので受け入れるしかありません。慣れましょう。それが嫌な場合は、そこそこキー数を確保すべきです。
 レイアウトというのは表面的な配置もそうですが、『どこに、どのキーがあるのか?』が重要です。そういった部分もこのタイミングで検討してみましょう。まあ、後々修正できるので「こうかな?」程度でも十分です。

 好みの、使いたいレイアウトは決まりましたか? 電気代以外には費用はかかりませんので、十分にここでレイアウトを検討してみてください。Twitter、ブログ、YouTubeで自作キーボードを紹介している方がいらっしゃいますし、そういった方々が紹介されている自作キーボードを参考に、御自分が使いたいキーボードのレイアウトを目指してみましょう!

 次回は『3.プレートデザイン編』です。……と思っていたのですが、補足が必要だったので『2.レイアウト編 補足』に続きます。


※追記
レイアウトの保存は右上にある『Download』または『Raw data』タブにある『Download JSON』で『.json』ファイルをダウンロードしてください。
右上の『Download』は画像データも保存できるので、資料として残したいとか印刷して確認用にしたい場合に活用しましょう。

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