【自キ】自作キーボードを設計してみよう 5.空中配線の注意点編【設計】


 前回までの内容で部品、道具は揃えられましたでしょうか?
 いよいよ組み立て……の前に、空中配線の注意点を確認しておきましょう。


・特別な加工や対処をしなければキースイッチは基本、交換できない
 空中配線は基板が無くてもキーボードを組める手法ですが、良いことばかりではありません。基本的に、一度装着したキースイッチは交換できません。むしろ、これこそが基本であり、ホットスワップが特別なのだということをあらためて確認する必要があります。
 キースイッチが交換できない理由ははんだ付けをしているから、というのが最大の理由ではありますが、それは市販キーボードでも同じ事が言えます。しかし推奨は出来ませんが、市販キーボードもはんだを取ってしまえば交換できたりします。では、空中配線では何故……? というところに疑問を持たれる方もいらっしゃるかと思いますが、それははんだ付けが最大の理由ではなく、プレートにキースイッチを固定してしまうからです。

 冒頭の画像、ちょっと見えにくいのですがグルーガンでプレートにキースイッチを固定しています(ちなみにちょっと画像のは足りてないです)。固定する理由は、こうしないとキースイッチが抜けてしまうからです。キースイッチのプレートというのはキースイッチの『ツメ』を引っかける場所を作る必要があるのですが、実は普通に2mmプレートで製作した場合、その『ツメ』が引っかからないのです。1.4mmのプレートで作るか、またはツメが引っかかる加工をしておく必要があります。……が、この企画でやる方法ですと、それが出来ません。なので、キースイッチを固定する必要があるのです。
 グルーガンはまだ可能性がありますが、他の強力な接着剤の場合は外して再度取付け、というのが難しいかなと。スイッチはともかくプレート側にダメージが入ったら、リカバリは厳しいでしょうね……。なので、基本的には交換できないものであることを念頭に置いて、組み立てをしたいところです。

 スイッチソケットを利用してホットスワップ化する手法も無いわけではありませんが、ソケットをどう処理するか、その場合でもプレートの問題は残ったままと、越えるべき課題は少なくありません。なので、自作キーボードに慣れた頃か、一度空中配線でシンプルに組んでから挑むのをオススメしたいですね。


・配線を綺麗にまとめるのは難しい
 これはもう本当に頭を悩ました部分でして、配線を綺麗にまとめるのはとても難しいです……。プレートを外した時に見える配線が綺麗かどうか以前に、配線が邪魔をしてプレートがたわむ……なんてことも発生する可能性があります(というか、やりました)。
 組んでみてからの印象ですと、エナメル銅線で組んだほうが綺麗にしやすいのかな? という気がします。被覆付きの導線(カラフルなやつ)ですと、どこにどこの配線が行っているのかが分かりやすい反面、ちょっと見栄えを整えるのが難しい感じです。もちろん、被覆付き導線で綺麗にまとめていらっしゃる方はそれはもう沢山いらっしゃるでしょうが……自分のような、あまり器用とは言えないレベルの人間だと、ちょっと難しいですね。
 綺麗に仕上げられている空中配線は、工芸品としての美しさを感じます。画像検索で辿り着く作例は本当にそんな作品ばかりで、もしかしたら自分が組んだ配線に絶望するかもしれませんが……初めてなんだからそんなものさ、と開き直りましょう。私は開き直りました


・設計図とカスタマーサービスは存在しない
 こう書くと言い過ぎな気もしますが、『自分が産み出したこの世にただひとつのキーボード』は、自分にしかその構造は分かっていません。もちろん、有識者に相談すれば「こうじゃない?」という助言をもらえるかもしれませんが、それも一般的なトラブル内容ならともかく、自分のキーボード固有のトラブル――たとえば、配線間違えなどであれば、配線の画像を見せて、確認して貰わない限りはわからないでしょう。絶対的な設計図とカスタマーサービスは、『マイキーボード』にはありません。貴方にしかわからず、貴方が自分で対応するしかありません。助言は得られるかもしれませんが。
 自作キーボードは設計者とキット入手者の距離感が市販のメーカーに対するものとは異なります。それは、対応している人間(設計者)が一番、その自作キーボードのことを分かっているからです。自分で設計するということは、頒布するしないはともかくとして、自分がわかっていないと難しいものであることを再認識する必要があるかもしれません。


 とりあえず思いつくことを書いてみましたが、これらを踏まえた上で自作キーボードを空中配線で組むということは悪いことではないし、恥じることもありません。基板を作るのは大変だし、それで組まれたキーボードの完成度の高さは魅力的ですが、だからといって空中配線が駄目なんて事はありません。ある意味では難しいですしね。
 筆者自身、「基板は作れないけど空中配線なら……」と手を出した人間ですが、自作キーボード設計の入口として、そういうルートがあって良いと思います。今では基板設計のハウツーをまとめたブログ・書籍もけっこうあるみたいですし、いきなり基板設計というのがスタンダードになっているのかもしれません。ですが、キーボードとして形にする道はそれだけではないので、基板設計で躓いて諦めるのは勿体ないので、空中配線で是非、あなたの頭の中にある最高のキーボードを形にして欲しいなと勝手に思っています。

 次回は、いよいよ『6.空中配線で組み立て編』です。

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