【自キ】30%キーボードを空中配線で作ってほしい【設計】


 30%キーボードであるActy-31を愛用しています。以前は40%未満のサイズのキーボードに対して「自分では使えない」と思っていたのですが、実際に使ってみると(自分用に作ったというのもありますが)どうにかなってしまいました。

 今回は、私の体験から言える空中配線で30%キーボードを作るメリット・デメリットについて触れつつ、気軽に30%キーボードを作るのは悪くないのでは? という記事を書いてみようと思います。「それ、前にも読んだぞ?」とお思いの貴方……正解です。しかし、私も底辺なりに日々小さな成長を遂げている……筈なんです。そういったアップデート込みの記事になりますので、良ければお付き合いいただけますと幸いです。



 私が30%キーボードを空中配線で作ってみようとオススメする最大の理由は、コスト面の問題です。自作キーボードを設計、組み立てる上でかかるコストは、人的なものを無視すれば以下の通りです。

・キースイッチ

・キーキャップ

・ダイオード

・導線

・プレート(ケース)

・マイコン

・スペーサー

・ネジ

・ゴム足

・USBケーブル

 プレート(ケース)については、シンプルな構造にする場合は二枚構成のサンドイッチマウントが安心・安全な中で低コストになるかと思います。基板を使っている場合と異なるのは、基板を使う場合はキースイッチプレート+基板にゴム足を付ける潔い(?)手法が採れますが、空中配線では基板の代わりにボトムプレートが(本来の役割ではありますが)ゴム足を付けてデスクと触れることになります。

 部品点数はキースイッチの数に影響を受けます(当たり前のことを何言っているんだと思われるでしょうが)。30%キーボードは60%と比べて約半分のキー数ですから、部品点数も同じく約半数です。それは価格的にも約半数ということですね。


 安くて小さければ良い、というものでもありません。機能的なパッド(テンキーなど)として設計するのであればともかく、文章を打つためのキーボードとして用意するのであれば、ちゃんと使えるものであるべきです。Acty-31を作る際にはその点を重視し、コンパクトしつつも自分が文章を打てるであろう最低限のサイズ(キー数)というものを意識して作りました。結果として、私は現在Acty-31でブログの更新や趣味の小説執筆が出来ているので、目標は達成できたと言えるでしょう。作って終わりではなく、使えるキーボードであるというのが良いと思います。


 作る上でのメリットとしては、安さ以外にはんだ付け点数が少なくて済む、というのも見逃せません。空中配線は治具がなければ結構……いや、かなり面倒なのですが、ほとんどの人は治具なんて作らない(作れない)し、そんなものに時間をかけるなら気合いで乗り切ろうという人もいるのではないでしょうか? それが、60%や50%で作る際よりは楽というのは、大事な点です。この部分に関してはデメリットらしいデメリットはないかな……いや、空中配線の段階で面倒なんだからデメリットだろう、と言われてしまうと否定は出来ないのですが(苦笑)。でも、基板を設計して発注して……って工程を考えると、ある意味では楽ではないでしょうか。……そうでもないのかな??


 プレートの作り方なんてわからないよ、という方には是非『自作キーボード設計ガイド』をお読みいただきたいですが(基板も設計できるようになるはず)、私のようにある程度楽をしつつで作るのであれば、『Plate & Case Builder』というサイトで基本部分は作れてしまいます。KLE(Keyboard Layout Editor)で作ったレイアウトからプレートを作成できるサイトです。KLEで吟味したレイアウトを、実現できるように出力させるのです。

使いたい配列、配置にキーを納めてみましょう


 過去にもこのblogで触れているサイトなのですが、使い方としては表示されている各項目をいじってプレートの形状を変化させます。角を丸めることは出来ますが、デザイン的に一部分だけ変型させるという使い方は難しいです(出来ないわけではないので、説明を読み込んで扱えそうならトライしてみると面白いかなと思います)。私はまったく自信が無かったので、シンプルに板形状にして角だけ丸めています。

 ネジ穴も設定出来ますので、イイ感じにサイズや位置を設定してあげると自分でわざわざ穴を開けずに加工してもらえるのでやっておきましょう。ただし、加工依頼先のデザインルール(発注デザインでやるべきこと、やってはいけないことのルール)を守るように作成する必要があります。失敗しやすいのはレーザーカットするパーツ間の距離でしょうか。

 設定したものを出力すると、プレートの線画が出来上がりますが、これを加工依頼先の指定する形式、デザインルールに直す必要があります。私は今のところ遊舎工房さんにお世話になっていますが、遊舎工房さんのテンプレートに合せてデータを加工する必要がありました。

A4サイズのテンプレートに納めたActy-31のプレート

 私はInkScapeというフリーソフトで遊舎工房さんのテンプレートにPlate & Case Builderで出力したデザインを貼り付けて調整しています。デザインルールをよく読み込み、指定通りに調整すれば大丈夫なはずです。私が最初に苦労したのはネジ穴と外形の線が近すぎた、とかですね……近すぎると加工に支障が出て変形してしまうので、事前に修正指示が来るかもしれませんが、依頼する時点でそうならないように距離を確保した方が良いでしょうね。

 遊舎工房さんのレーザー加工サービスは2週間程度で納品されるという目安ですが、割引サービス適用があるタイミングではそれ以上かかる可能性があるため、注意事項はよく読んでください。


 プレートが完成したら、もうあとは組み立てるだけです。……と、言いたいところですが、ファームウェアを作る必要がありますね(苦笑)。ただ、ファームウェアも30%サイズくらいならまだ楽かなと思います。キー数が多くなればなるほど大変ですし、どこかミスがあってもなかなか気がつけないということもありますので。ファームウェアはタイミングによっても使う種類によっても違いがあるため、詳細は省きます。……それが一番知りたいんだよ、というのはとてもわかりますが、私もファームウェアに精通しているわけではないので、余計な混乱を招くのを避けるためにもここでは記述を控えます(書けないだけだろう、というツッコミはとても効くのでやめてください)。

 ファームウェアがマイコンに無事、書き込めたらあとは組み立てるだけです(今度こそ)。注意点は配線の位置や向きを間違えないこと、ですかね。組み立て時は裏側を見ながら配線をするので、左右が逆になる点に注意が必要です。基本的にはQAZの順番に縦が繋がる配線でいけばOKだと思います。このあたりはファームウェアでどうにでもなる部分ではありますが。


 空中配線にアクリルプレートを使う場合、溝加工が出来ないとキースイッチを固定できません。遊舎工房さんではテンプレートに沿って作れば溝加工をしてくれるサービスが始まりましたが、難しいようであればグルーガンや瞬間接着材で固定しましょう。その際、瞬間接着材では白化という現象を起こすことがあるので、黒系のプレートを使う場合は気を付けましょう(放置しなければ、拭けば取れるものですが)。上の画像はその点で失敗しています。


 出来上がれば、コンパクトで持ち運びがしやすい、貴方だけの自作キーボードの誕生です。キースイッチの交換ははんだ付けする関係で容易ではありませんが、気に入ったキースイッチをルブしたりしてトコトン突き詰めたら、交換する必要も無い気がします。私みたいにキメラスイッチを使いたい、と思っても、60キーとか用意するのは辛いですが、31キーくらいなら……ね? そういう点でも、30%キーボードは、そしてそれを基板設計が出来なくても作れるというのは面白い選択肢だと思いませんか?
 私は有名な自キ設計者ではありませんが、自分だけのキーボードを3台完成させ、現時点でそれなりの満足感を覚えています。ただ、自キ生活を送る中で欲求は増えていくし、知識や経験も蓄えられていきます。これはエンドゲームと思ったものが、いやいやまだまだ先があるのでは? と思うようになったり。私は万人向けの、多くの人に喜ばれるキーボードは作れませんが、自分を喜ばせられるキーボードは作れる人間であると思いたいです。そんな私が作ってみて、使ってみて感じた30%空中配線キーボードの良さ……これをまだ知らない人がいたら、是非知って欲しいななんて。そう思ってしまいます。
 これはあれです、上から目線ではなく卑屈なオタク目線てやつです。「へへ……この作品、めっちゃいいじゃん……これを知らないとしたら、絶対人生損してるよ……」みたいな。……上から目線ですか? う~ん??

 はんだ付けにある程度慣れているのであれば、30数キーの空中配線なら頑張れるのでは無いかなと思います。基板設計で躓いて、自分での設計を諦めた人がいたら……是非、空中配線でチャレンジしてみてください。基板で作れるのは凄いですが、空中配線だって捨てたもんじゃありませんよ! 作っているって感じも、基板を使うのとはちょっと違って面白いと思いますよ?



この記事はActy-31で書きました。

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