【自キ】 #全日本手配線キーボード協会 【設計】

 先日、TALPKEYBOARDさんのポストで以下のようなものを見かけました。

 自設計では手配線(空中配線)しかやっていない私としては、とても興味深いポストです。



 私がそもそも手配線に対して意識を向けたのは、いくつか要因はありますがそのひとつとしてTALPKEYBOARDさんが取り上げられていた芸術的な手配線キーボードがありました。


magnet wire keyboard tutorial - 基板もケースもない自作キーボードの作り方


 上の記事の作例では治具を使っていますが、基板が無い(これはケースも無いですが)自作キーボードでもこんなに美しく仕上げられるのだということを私に印象づけました。他にも、引用できるポストや記事を失念しましたが、透明アクリルのサンドイッチマウントで綺麗な手配線を見せる自作キーボードを見かけたことも、私に手配線というものを意識させる要因となりましたね。


 手配線は面倒という確かな面を持ちつつも、基板設計のためのソフト(KiCad)の使い方が分からない、苦手という人間でも自作キーボードを設計できる方法の一つです。私自身、KiCadの操作が上手く出来ず、悩んでいる中で手配線を思い出して「基板が無くても作れるじゃないか」と手を出したひとりです。

【自キ】Act-JP52”零式”(仮) その1【空中配線】

 設計したい、というきっかけ自体はYamada75 GoとJ73GL、GL516 デザインガイドとの出会いでした。「自分でもこんな良いキーボードが作れたらな……」という思いがあり、手配線という手段があって手を出せた、という感じですね。出会いと(自分自身の)タイミングが良かったというのも大きいかもしれません。

【自キ】30%キーボードを空中配線で作ってほしい【設計】

 30%を作ろう、というのは自作キーボードに慣れていない人にはなかなか難しいですが、サイズはともかくとして自分が使いたいレイアウトのキーボードを作るのに基板が絶対必要では無いという事は、頭に置いておいても良いんじゃないかなと。基板があった方がカッコイイ気がするし、剛性感も手配線よりも確保しやすいですが……前述の治具を使った手配線キーボードや透明アクリルで配線を見せる手配線キーボードの格好良さは凄いですからね!



・実際の所、手配線のデメリット(面倒なところ)は?

 メリットだけ上げていても、というのがあるので、実際に作って、使ってみての自分なりの感想ですが……最大の面倒なところは、組み立て時の難易度でしょうか。基板があると部品を固定してはんだ付け出来るようなケースでも、手配線では手で保持しなければならないので難易度は上がります。困難、という程ではありませんが人によってはとても面倒に感じるかもしれません。プレート間のスペース確保も難しいところでして、綺麗に配線が出来れば薄く出来ますが、自分のように配線が下手だとある程度スペースを確保しないと圧迫による接触不良や断線という失敗が起きます。

 なるべく(公平に)悪いところを出そうと思い返しましたが……自分が失敗したケースを思い返し、原因とか色々考えると結局の所配線にすべて集約されるように思います。ファームウェアの面倒さは基板だろうと手配線だろうと同じなので、基板で作るのと比べると最大の難所は配線だと思います。KiCadで作る場合は自動配線のツールとかありますし(とはいえ、自分の手で修正しなければいけない場合もあるそうですが)。綺麗に作るというのは魅せる(誤変換にあらず)場合は必要ですが、機能させるという点ではバッチリはんだ付けして、接触不良を起こさないことが大事ですね。それが大変というか面倒かなと思います。

汚い上に接触不良という事例(Act-JP52)
はんだ付けが甘かったりして、接触不良になりました


・組み立て時の苦労はあれど、手配線は部品さえあれば気軽に試作が出来る…かも?

 はんだ付けが大変、というのは確かですが、基板を設計して工場に製造依頼して……という部分を省略して「自分が使いたいレイアウト」を試すのには手配線はとても向いている手法だと思います。「基板設計が難しいんだけれど、早く自分だけの自作キーボード作りたいなぁ……」という人には、まず手配線で試作するのをオススメしたいですね。最終的に頒布まで持っていきたいのであれば基板はほぼ必須だとは思いますが、自分だけのためであれば、基板でなければならない理由はあなたの中にしかありません。私のように、実際に作って使ってみると「ここはもう少しこうした方が良いな」というのが見えてくるかもしれませんから、それなら基板で作る前に手配線で試した方が良いように私には思えます。

 基板を作って、ケースを作って……そうして完成したキーボードは、きっとカッコイイ(もしくは可愛い)キーボードだと思います。ただ、シンプルで良いのであればアクリルをレーザーカットして(もらって)、手配線で組んだ自作キーボードでもきちんと機能します。作例や参考になる記事、同人誌が出回っている現在はいきなり基板設計でも難易度は以前ほど高くないかもしれませんが、手配線でも別に悪くはないと思います。部品さえあれば、すぐに組み立てが出来るかもしれないのですからね。



 私は自設計キーボードは手配線のみです。基板で作ることに憧れはありますが(まだ勉強はチマチマと続けています)、別にこだわりはありませんし、思いついたキーボードは手配線で組んでみるか、と思います。上の画像で言うと下、Acty-31なんて思いついたから作ってみたの典型例でして、動画で見た打鍵音がやたら良いキーボードに憧れて作ってみたなんてキーボードです。自分が使えるレベルで省キーにしたらどんなものになるかな、という考え方でレイアウトを作成し、アクリルのレーザーカットを依頼して配線は手配線です。(上のActy-45も同じですが)

 基板を使っているから完成度が高い、というのはちょっと違うかなと思います。もちろん、キッチリとした感じが出ますし、基板設計は大変ですからそこにひとつの凄さがあることは間違いありません。ただ、手配線だから楽をしているとか、完成度が低いというのは無いと思います。完成度が低いのは設計と組み立ての技術の問題であり、手法そのものに問題があるわけではないと思いますね(私のキーボードが完成度が低いのは、私の設計と組み立て技術の問題ということです)。キーボードとして完成度が高い、というのは軽視すべきではない要素ですが、そもそも道具として使えるかどうかというのが大事であり、キチンと使えるのであれば完成度は自ずと低くはならないのではないかなと思います。


 お気持ち文章をダラダラと書いてしまいましたが、手配線は自作キーボード設計の入口としては悪くない選択肢だと思います。基板設計とか無理、やっぱり自分には自作キーボードの設計なんて出来ないんだ……そう思う前に、手配線でひとつ組んでみてほしいなと。諦めたらこの世に産まれなかった素敵なキーボードが、その決断で産み出されるかもしれませんからね。

 基板設計で悩んでいるのが諦める理由であれば、是非、手配線であなたの考えたキーボードを作ってみてください。ケースだって最初はこだわらなくて良いんです、レイアウトを確かめるだけなら(立体的なレイアウトは難しいですが)単純なアクリルカットで作ったプレートで作れば良いのですから。


この記事はActy-45で書きました。

コメント

このブログの人気の投稿

【VARMILO】押下圧35g! デイジー軸ってどんな感じ?