【キーボード】メンブレンと向き合う秋【メンブレン】


 メンブレンを知っているだろうか? ……いや、こんなブログを読んでいるあなたなら、きっと知っているだろう。キーボードにこだわらない人間、資金繰りに困っている人間にとってありがたい存在、メンブレンキーボード。とにかく安い。凄く安い。低価格のキーボードであれば、その多くがメンブレン方式のキーボードだろうというくらい、安い。

 しかし、『安い』という、ただそれだけの認識だけで良いのだろうか? 私はお気に入りの抹茶味のアイスを食べながら、思考の海に沈んだ。



 メンブレン方式というのは細かく見ればいくつかに分かれるそうだが、その共通するものはシートスイッチを使用している、ということだろう。私があまり好きではないパンタグラフ式もその点でメンブレン方式の一種であり、メンブレンと聞いて大抵の人が思い浮かべるのはラバーカップ式というものになる(参考)。特殊なものではバックリングスプリング式というものがあるそうだが、残念ながら私はまだ出会えていない。動画を検索するとヒットするので、どんなものかは(タイピング音がメインだが)調べて欲しい。

 メンブレン方式はシートスイッチに接触させることで入力を認識させる方式で、一枚のシートスイッチを使用することから独立したスイッチとなっているメカニカルスイッチとは大きく異なる(ただし、メカニカルスイッチも基板が無ければ仕事が出来ないことを考えると、この比較はあまりよろしくないかもしれない)。安価で製造できる反面、構造上、一ヶ所でも壊れようものなら全交換or買い直しという0か100かという振れ幅の大きなキーボードである。

 パンタグラフ式では多少クリック感のあるものも存在するようだが、基本的にはクリック感は薄いように思う。ラバーカップ式は尚更であるが、これに対してバックスプリング式はかなりスイッチ感があるようだ。まあ、あれだけ音が出ていたら……。

 メンブレンは構造上コストがあまりかからず、低価格キーボードに採用される傾向があるが、中には『高級メンブレン』という「お前、もうメンブレンじゃないだろう……」というものも存在するので、世の中は広いものである。個人的には『高級メンブレン』はメンブレンの顔をした別物だと思うのだが、世の中が『高級メンブレン』と称する以上、小市民な私はそれに従おうと思う。

(しかし、やはり別物だと思うのだが……)

 ところで、かの有名な静電容量無接点方式はパッとみると構造がとてもメンブレンなのだが、その価格と評価は天と地ほどの差である。実際のところは接触でスイッチが入るメンブレンと、電極が一定の距離に近付くことでスイッチが入る静電容量無接点方式は全くの別物だが、そんなことは私くらいの素人が初めて知った時には分からないものである。「メンブレンにスプリング仕込めば良いじゃないか」と、勘違いをしても叱らないで欲しい。


 さて、話を戻そう。

 メンブレン方式の打鍵感としては、代表的なラバーカップ式は打鍵初期にグニッとした抵抗感があり、その後スッと落ちる。以前は特に意識していなかったのだが(これが当たり前だと思っていたので)、これが所謂『タクタイル感』であり、中には「(タクタイル感のある)茶軸と同等の打鍵感」等と謳っているキーボードが出てくるわけである。私個人の好みとしてはタクタイル系、クリッキー系は好きではないのだが、ラバーカップ式程度のタクタイル感であれば許せそうな気がする(何様だ?)

 リニア系が好みな私としては「これ良いな!」と思うものではないが、じっくり向き合ってみるとメンブレン方式(ラバーカップ式)も悪くはない。キーの不安定感、押下圧の重さといった弱点はあるものの、メンブレン方式は価格を考えると非常に良い働きをしているように思う。フルキーボードで数千円(安いものはそれ以下)というのを考えると、メカニカルキーボードがコスパが悪いように思えてしまうから不思議だ(もちろん、そんなことはないのだが)。メカニカルに比べればメリハリのない、重くて柔らかい打鍵感だが、これはこれで好きな人はいるだろうし、現に私としては嫌いではない。重い感じは長時間使用に向かない気がするが、そこそこの打鍵感としてフィードバックが返ってくるのは打っていて重要な部分だ。



 パンタグラフ式では、とにかくペラッペラな打鍵感が好みを分かれさせる要因だと思うのだが、それに加えて薄さゆえか耐久性が乏しいのがネックだと思うのだ。私のようにそこそこの打鍵でガシガシと使用していると、いつのまにかキーが飛んでしまうほど傷んでいた、なんてこともある。「キーって飛ぶのね!」とか、ふざけていないとやっていられないショックだ。パンタグラフ式の名前の由来である支持部品がどうしても構造上脆くなりやすいようだが、これはもう発明品として欠陥が有るのではないかと言いたくもなる。とはいえ、壊れるまではノートPCという文明の利器をしっかりと使えるのであるから、文句ばかりも言えないところだ。

 バックリングスプリング式については出会いがないので割愛する。


 安さがとにかくウリのメンブレン方式だが、過去のキーボードにはマニアが喉から手が出るほど欲しいという代物も少なくないようだ。もちろん、それには歴史や愛着といった背景もあるだろうが、『メンブレン方式のキーボード』だからといって蔑ろにして良いものでもないのだ。……まあ、『高級メンブレン』もあるし?

 打鍵感と(役割的に仕方ない部分ではあるが)安っぽさが際立つ見た目と、メンブレンキーボードの多くがキーボードにこだわり始めた人間の視界から外されていく傾向があるように思うが、中には独特の『味』を忘れられず追求している人間もいるのでなかなか思う以上に奥が深いのではないだろうか?


 なんてことを、抹茶アイス味わった後に書いてみたりする秋の夜である。


この記事は『ELECOM TK-U12FYALG』と茶番のような文章を書きたい気持ちで書きました。

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