【キーボード】20年先も使えるキーボードという理想【自キ】

”アメリカ西部のカウボーイたちは、馬が死ぬと馬はそこに残していくが、どんなに砂漠を歩こうとも、鞍は自分で担いで往く。
馬は消耗品であり、鞍は自分の体に馴染んだインタフェースだからだ。
いまやパソコンは消耗品であり、キーボードは大切な、生涯使えるインタフェースであることを忘れてはいけない。

東京大学 名誉教授 和田英一”

 有名な、HHKBのサイトにも掲載されている和田英一氏の言葉ですね。パソコンは変わろうとも、馴染んだキーボードは生涯使えるものであるというこの言葉は、自作キーボードの設計をする上で私の中に大きな影響を与えています。


 HHKBの初期型、PD-KB01やPD-KB02のことを調べていると、「20年以上使っているが、まだしっかりと使えている」という感じのブログを見かけました。それ以外にも発売当初に手にし、(ブログ執筆時点で)十数年使用しても不具合がないという声を見かけました。これって、凄いことだと思うんですよね。
 パソコンは数年で時代遅れという中で、キーボードは機能面では大きな進化もなく、それこそ20年以上前のキーボードが普通に使えます。新しい、合理的な配列や魅力的なキースイッチの開発が行われているものの、キーボードの入力装置としての機能は大きく変わることはなかったわけです。今では主流ではなくなったPS/2接続の古いキーボードも、USB変換アダプターを噛ませれば普通に使えますからね。とはいえ、そういったキーボードが不具合も無く使い続けられる、使い続けたいと思うかどうかは別問題です。

 HHKBは和田英一氏の理想を製品として(いくつかの妥協はあったものの)実現したキーボードです。その初期は今でこそHHKBと言えば静電容量無接点方式とされていますが、当時はメンブレンでした。好みの問題ではありますが、打鍵感という面でメンブレンと静電容量無接点方式の優劣を無理矢理付けるのであれば、後者の方が優れていると評価する人は少なくないのではないでしょうか。しかし、それでもメンブレンのHHKBを愛用し続け、20年以上も愛用した人が確かに存在するというのはHHKBというキーボードの根幹にその魅力があったからであろうと想像できます。そう思えるキーボードを手にし、使えるというのは幸せだろうなと、羨ましくなってしまいますね。

 自作キーボードというのは、それぞれの『エンドゲーム』を目指す面があります。自分にとって最高のキーボードを追い求める、それが自作キーボード愛好家の楽しみであり夢であるのかもしれません。そして設計をする人にとっては、それをより具体的に実現するために追求していくものなのだと思います。……まあ、それだけではないと思いますが。
 自分が設計したキーボードは、20年以上使えるだろうか? 使い続けたいと思えるものだろうか? 手元にある、今実際にこの記事を打っているAct-JP52"零式"を見ながら、ふと思います。もしもそんなキーボードを自分で作れたら、それはとても幸せなんだろうなと。



 とはいえ、気になるキーボードがあれば浮気したくなるのは、どうしようもないですね(苦笑)。困ったものです。

この記事はAct-JP52"零式"で書きました。

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