【自キ】30%キーボードを作ってみよう その1「レイアウトを考える前に」【設計】
この記事は、
・30%キーボードを空中配線(手配線)で作る
・30%キーボードで文章を打てるように環境を作る
以上、ふたつのテーマを掲げて複数回書いていくものの、第1回です。
今回は「レイアウトを考える前に」ということで、そもそも30%キーボードのメリットとデメリットを踏まえた上で、筆者がオススメする理由を書いていこうと思います。
30%キーボードというのは、所謂フルキーボードに対しての大凡のサイズ感からそう呼ばれています。フルキーボードの約30%のサイズが30%キーボードであり、だいたい30キー前後のキー数になるかと思います。
(注:日本語配列のフルキーボードは大凡109キーで、その30%は約32。キーボード全体のサイズ感に関しては、ここでいうサイズとはまた別のお話とする)
30%キーボードのメリットは、まずサイズ。
ノートPCのキーボード部分との比較でだいたいのサイズ感を見てもらいたいのですが、かなりコンパクトです。キーボード本体側、ケースに余白を持たす設計だともう少し大柄になりますが、特にそうしない場合はこんな感じになります。ここからさらにベゼルレスなデザインにもっていくと、さらに小さくもなりますね。
Nintendo Switchのソフトポーチにケーブルと一緒に収まってしまうサイズです。つまり、持ち運びに便利です。
持ち運びのメリット以外にも、打鍵時に腕を大きく動かさないでタイピング出来るというメリットを挙げる人も多いでしょう。所謂ホームポジションから手を大きく動かすことなく打てるのがコンパクトレイアウトの特徴だと思います。ただし、デメリットもあります。
デメリットとして挙げられる点、それはやはり指が忙しくなるというところでしょう。それは、表層に存在しないキーをコンビネーションで打つことによる忙しさであり、それは指とともに思考への多少の負担も考えられます。どのキーを、どのコンビで打てるか? それを記憶し、指または脳が悩まずに打てるようになるには、それなりの習得期間が必要になるかもしれません。これに関しては個人差も大きいかと思います。
メリット、デメリットを考慮した上で、30%キーボードを使ってみたいかと自己に問い掛けると、即座に「使ってみたい」と答えを出せる人は多くないかもしれません。逆に、「だったら使わないでいいや」と思う人は多いかもしれません。人は快適性を求めて暮らしを豊かにしてきました。デメリットの部分に面倒くさそうなものが見えたら躊躇するというのは、そういった流れの中で自然な反応だと個人的には思います。
そういった事を踏まえた上で、私はあえて30%キーボードを作ってみてほしいなと思います。それは、「面倒である」という最大のデメリットを克服することが出来れば『面白い』自作キーボードだからです。
自作キーボードを作る上で、大雑把な工程は以下の通りです。
・レイアウトを考える
・ケース構造を決める/作成or発注する
・配線を決める(基板設計)/発注する
・組み立てをする(配線含む)
・ファームウェアを作成する
この中の工程で外部に発注する必要があるのはケースと基板、足りない部品の手配といった部分です。ケースに関しては3Dプリンタをお持ちであればそれで作成することも可能ですが、お持ちでない場合はサンドイッチマウントでもケース構造でも、外部に設計したデータを元に製作・加工してもらう必要があります。基板に関してはかなりの上級者でもなければ発注するのが通常かと思います。部品に関してもフルスクラッチで用意できるというのは現実味が無いかなと思うので、やはり発注する必要があるでしょう。
ただし、この過程の中で飛ばせる部分があります。それが『基板設計/発注』です。これに関しては配線を考えるという工程は飛ばせませんが、空中配線(手配線)という手法によって代用することが可能です。基板設計が環境の充実によりオーソドックスになってきているようですが、空中配線も特別な作成方法というわけではなく、試作段階や使う人の好みで現在も愛用されている作成方法だと思います。筆者は基板設計を苦手としているため、空中配線での自作キーボード作成を行っています。このメリットは基板設計に必要なソフトの操作に悩まされることなく、そして主に海外の工場に発注することが主流の基板発注に悩まされることがないという点です。部品が揃っていれば基板の到着を待つ必要も無いという点も、メリットのひとつでしょう。デメリットは、自分で各部品をはんだ付けする必要があるということでしょうか。
基板設計のメリットは品質的な部分とはんだ付け点数がコストをかければ減らせる点(PCBA)でしょうか。手配線はその部分の人的・金銭的コストを真逆にしたものだと考えると分かりやすいかもしれません。金銭的コストは手配線の方が少ないですが、作成者の人的コストは増してしまいます。
空中配線はそれなりの難易度でもあります。治具でもない限り、キースイッチとダイオード、導線をはんだ付けしていくのはそれなりの苦労があります。ちゃんとはんだ付けが出来ていなければ動作不良になります(はんだ不足で動作不良は基板でも起こりますが)。ただ、バチッとはんだ付けしておけば何も問題ないですし、最初のうちは見栄えよりもしっかり機能するかどうかです。某湾岸がテーマのクルマのマンガをご存知の方は、夜逃げした先輩が語っていたことを思い出してください。大事なのは「見た目じゃなくてちゃんと使えるかどうか」です(今、通じるのかこれ?)。
ちなみに透明なアクリルを使わなければ、サンドイッチマウントでも無理に覗き込まない限りははんだ付け部分は目立たないので、気にしなければ大丈夫です(自分に言い聞かせています)。
面倒そうだなぁ、とここまで読んで思われた方もいらっしゃるでしょう。私も同じ立場で読んだらそう思うでしょうね(苦笑)。ただ、作るという点において30%レイアウトと空中配線はとてもオススメです。それは早く、そして安く作れるからです。
この早く、という部分に関しては基板設計・発注は含んでいません。実際の所見聞きする感じでは繁忙期でもなければ基板を発注して届くまでにそう時間はかからないようです。私の想定ではアクリルプレートを使って組み立てますが、そのアクリルプレートを発注して届くまでと同程度の期間だとするとあまり時間差は無いかもしれません。ただし、30%であるという部分に関してはんだ付け点数が抑えられるので、60%くらいのサイズを作るよりも早く作ることが出来るでしょう。
安く、という部分も基板作成の面よりも単純に用意するキースイッチの数から『安い』と考えています。手頃なサイズである60%と比べて約半分で済むのですから、安いのは当たり前です。とはいえ、低価格高品質なキースイッチも探せば色々とあるようですから、好きな(使いたい)キースイッチによってはこのメリットは薄いかもしれませんね。
もうひとつメリットを挙げるとすれば、気になるキースイッチを試すのに数をあまり用意しなくても良いということが挙げられます。デメリットとしてはキースイッチの交換が容易ではないので基本的には交換できないと考えた方が良いというものがありますが、私のように気になるキメラスイッチを実際に実用レベルで試したいという場合に30%キーボードは少なすぎず多すぎずで、イイ感じだと思います。
メリット、デメリットを私が思いつく中で挙げてみましたが、如何でしょうか? 30%レイアウト、空中配線での作成はざっくりとまとめると以下のような感じでしょうか。
☆メリット
・空中配線なら基板設計をしなくても良い(ただし配線については考える必要がある)
・用意するキースイッチが少なくて済む
★デメリット
・配線が面倒(はんだ付けが難しい)
・キースイッチを固定するので交換できない
もしも自作キーボードをいくつか所有し、組み立てているという場合。貴方が自分でも設計して作ってみたいと思っているのであれば。基板にこだわりが無いのであれば。筆者としては、空中配線で30%レイアウトのキーボードを作って練習するのも良いのではないかと考え、提案します。使うのには少し苦労するかもしれませんが、作るのは(空中配線として比較した場合)容易です。キースイッチも沢山揃えなくて済みます。キーキャップは……レイアウトによっては、少し大変かもしれませんが。
もしも少しでも興味を持たれたのであれば、この企画の記事を続けて読んで頂けたらなと思います。
次回は「レイアウトを考えてみる」です。
この記事はActy-31で書きました。
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